さぼてんおじさんのさぼてん

それは昨年のこと。
井の頭公園のベンチで友人とつもる話をしていると、背後から自転車をひいたおじさんが近づいてきました。
彼はおもむろに、私の友人にむかって、空き缶をさしだしました。

「コレあげる」

私は背を向けていたのでわかりませんでしたが、 彼は彼女の方を随分前からずーっとみていたそうです。

よくみると空き缶ではなく、空き缶に植えたサボテンでした。
育てば大きくなって花が咲くとか話だし、 育て方をコピーしたものをくれてよこしました。
さらに私にも目をむけて、ついでのように

「あんたにもあげる」

といってもう一缶くれました。
金を請求されるかと不安になりましたが、 彼はそのまま去っていきました。
その自転車の前かごにはあと３ツさぼてん缶が入ってました。

私は育ててみることにしました。
そしてコレ（写真）が現在のさぼてんの姿です。育て方の用紙は捨てたので正しい育て方がわからず、水だけ気がついた時与えていたのですが、随分大きくなりました。しかし、残念ながら一度も花は見せてくれません。